橘玲氏の新著『賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)を読みました。『臆病者の株式投資』『マネーロンダリング入門』の内容をさらに掘り下げるとともに、人的資本に基づく「究極の投資」や「ミセスワタナベ」(FX)など、新たな議論もあって、興奮しながら一気に読み終えてしまいました。ちょっともったいないかな。
また、小説『マネーロンダリング』『永遠の旅行者』を髣髴させる序章「さよなら、プライベートバンカー」も、短編ながらかなり印象的です。家内も氏の小説が大好きなので、序章だけでも読んでくれるかもしれません。
橘玲氏の議論を紹介しだすと記事が幾らあっても足りないので(氏の著作に当るのが一番よい)、「究極の投資」だけを簡単に紹介します。
「究極の投資」とは、お金持ちだけの「至高の投資」に対抗するための、庶民でも実行可能な投資法です。(要するに『美味しんぼ』ですな)
ここで大事なことは、「究極の投資」は、決してデイトレや集中投資ではなく、至高の投資(プライベートバンクや機関投資家がもつポートフォリオ)と同様の投資法である、ということです。つまるところは、異なる資産クラスへの分散投資ということです。
問題は、例えばお金持ちが数十億円(機関投資家なら数十兆円)の資金を投資しうるのに対し、庶民はせいぜい数百万円の現金しか手元にない、ということです。数百万円でも投信やETF、REIT等を組み合わせることはできますが、仮に年平均5%で回せたとしても、30年では5000万円にもとどきません(元本は4倍になるとはいえ)。
この課題をクリアするのは、人的資本という架空の資産です。
人的資本は、要するに年収を利子ないし配当とみて、そこからその人の価値(人的資本)を逆算したものです。例えば、年収500万円で、利回り5%とすれば、人的資本は1億円(500万円÷0.05)になります。
人的資本はあくまで架空の資産ですが、給与所得は毎月確実に一定額が見込める点で利子と同様であり、かつ、日本では正規職員は簡単にはリストラできないため、元本の安全性も比較的高いといえます。さらには、停年時には退職金という形で元本(の一部)が償還されます。
以上の理由により、人的資本は資産クラスでいえば 「債券」 に相当する、と橘氏は結論付けます。
さらに、給与は大半が円で支払われるので、日本の給与生活者の人的資本は、大半が 「円建て債券」 に分類されることになります。
と、ここまでの分析で、すでに小生は感嘆するのですが、「究極の投資」のメインディッシュはここからです。
「至高の投資」では各資産クラスに適切に配分(アロケーション)しているように、「究極の投資」でも、適切なポートフォリオを組まねばなりません。しかるに、庶民のポートフォリオは、先の例でいえば、1億円の「円建債券」と、数百万円の円建預金があるだけです。
ですから、論理的には、
人的資本以外の全資産を、10倍程度のレバレッジをかけたうえで、海外資産に投資せよ
ということになります。
そして、本書で紹介されているように、株価指数先物を使えば、実際に構築可能です(シカゴ商品取引所で取引されているS&P先物(ミニ)3枚にEAFE先物1枚を使えば、200万円ほどあれば、レバレッジ10倍で「世界株式ポートフォリオ」を保有できる。)
運よく、相場の暴落で元本消滅という事態に一度も遭遇しなければ、20万ドルの世界株ポートフォリオを回すわけですから、30年後に1億円、という数字はあながち空想でもありません。(定期的に元本を追加できれば、レバレッジも抑えることができ、なお実現可能性が高まる)
まぁ、レバレッジ10倍というのは、指数が10%下落したら元本が消滅する(その前に追証がかかる)、という恐ろしい状態なので、チキンなカズプーには絶対にできません。もちろん橘氏も、実際に勧めているわけではないです。
ただ、元本を400万円にしてレバレッジを5倍にすれば、バランスシート上は何のことはない、住宅ローン と同じなんですね。
だから、住宅ローンを組める気概のある方は、「究極の投資」だってできるかと思います。そしてリスクを怖れず挑戦した庶民の中から、億万長者が生まれるのかもしれませんね。
もちろんレバレッジ1倍でロングポジションオンリーの小生は、どちらもできません。すなわち、橘玲氏のせっかくの教えも豚に真珠というわけです。。。
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